一遍上人語録
時衆制誡(じしゅうせいかい)
専ら神明の威を仰ぎて、本地の徳を軽んずることなかれ。
専ら仏法僧を念じて、感応の力を忘るることなかれ。
専ら称名行を修して、余の雑行を勤むることなかれ。
専ら所愛の法を信じて、他人の法を破ることなかれ。
専ら平等心を起して、差別の思ひをなすことなかれ。
専ら慈悲心を発して、他人の愁ひを忘るることなかれ。
専ら柔和の面を備へて、瞋恚の相を現はすことなかれ。
専ら卑下の観に住して、驕慢心を発すことなかれ。
専ら不浄の源を観じて、愛執の心を起すことなかれ。
専ら無常の理を観じて、貪欲の心を発すことなかれ。
専ら自身の過(とが)を制して、他人の非を謗ることなかれ。
専ら化他の門に遊んで、自利の行を怠ることなかれ。
専ら三悪道を恐れて、恣(ほしいまま)に罪業を犯すことなかれ。
専ら安養楽を願って、三途の苦しみを忘るることなかれ。
専ら往生想に住して、称名の行を怠ることなかれ。
専ら西方を持念して、心を九域に分つことなかれ。
専ら菩提の行を修して、遊戯の友に交はることなかれ。
専ら知識の教へを守り、恣(ほしいまま)に我意に任することなかれ。
我が遺弟等(ゆいていとう)、末代に至るまで、すべからくこの旨を守るべし。努力(つと)めて三業の行体を怠ることなかれ。
南無阿弥陀仏 一遍
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