一遍上人語録
門人伝説
門人伝説08
また云(いわく)、浄土を立つるは、欣慕(ごんぼ)の意(こころ)を生じ、願往生の心をすすめんが為なり。欣慕の意ををすすむる事は、所詮、称名のためなり。しかれば、深心の釈に「使人欣慕《人をして欣慕せしむ》」といふなり。浄土のめでたき有様をきくに付きて、願往生の心は発るべきなり。この心がおこりぬれば、かならず名号は称せらるるなり。
されば、願往生のこころは、名号に帰するまでの、初発のこころなり。我心は六識分別の妄心なる故に、彼土の修因に非ず。名号の位すなはち往生なり。故に他力往生といふ。打ちまかせて人ごとにわがよくねがひ、こころざしが切なれば、往生すべしとおもへり。
欣慕の意とは、阿弥陀の浄土を欣び慕う心。
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