一遍上人語録
消息法語
西園寺殿の御妹の准后の御法名を、一阿弥陀仏とさづけ奉られけるに、其御尋に付て御返事
この事は申し入れ候しにたがはず。この体に生死無常の理をおもひしりて、南無阿弥陀仏と一度正直に帰命せし一念の後は、我も我にあらず。
故に心も阿弥陀仏の御心、身の振舞も阿弥陀仏の御振舞、ことばもあみだ仏の御言(おんことば)なれば、生きたる命も阿弥陀仏の御命なり。
然ば昔の十悪五逆ながら請取て、今の一念十念に滅し給ふ有難き慈悲の本願に帰しぬれば、いよいよ三界六道の果報も由なく覚えて、善悪二つながら物憂くして、唯仏智より計らひてあてられたる南無阿弥陀仏ばかり所詮たるべしと思ひ定めて、名号を唱へ、息たえ命終る。
これを臨終正念往生極楽といふなり。南無阿弥陀仏。
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