一遍上人語録
偈頌和歌(げじゅわか)
和歌19-28
又、或る時詠じ給ひける
すてやらでこころと世をば歎きけり 野にも山にもすまれける身を
捨ててこそ見るべかりけれ世の中を すつるも捨てぬならひありとは
おもひしれうき世の中にすみぞめの 色々しきにまよふこころを
こころをばいかなるものとしらねども 名をとなふればほとけにぞなる
法の道かちよりゆくはくるしきに ちかひの舟にのれやもろ人
をしむなよまよふこころの大江山 いく野の露と消えやすき身を
こころからながるる水をせきとめて おのれと淵に身をしづめけり
みな人のことありがほに思ひなす こころはおくもなかりけるもの
心をばこころの怨(あた)とこころえて こころのなきをこころとはせよ
とにかくに心はまよふものなれば 南無阿弥陀仏ぞ西へゆくみち
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