一遍上人語録
門人伝説
門人伝説05
至誠心を真実といふこと。管三品の云、「物を読むに事の様によりて、訓に読む事あり、訓に読まざる事あり」と。「至というは真なり、誠といふは実なり」と釈したまひたる故に、至誠をば訓にかへりては読むべからず。ただ名号の真実なり。これすなはち弥陀を真実といふ意なり。
わが分の心よりおこす真実心に非ず。凡情をもて測量する法は真実なし。所以いかんとなれば、能縁の心は虚妄なるゆゑに不真実なり。ただ所縁の名号ばかりを真実とす。故に名号を「不可思議功徳」ともとき、又は「真実」とも説くなり。理趣経の首題を、大楽金剛不空三昧耶経といふ。本より真実といふは弥陀の名なり。されば至誠心を真実といふは、他力の真実に帰する心なり。
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