一遍上人語録
門人伝説
門人伝説14
また云(いわく)、今、他力不思議の名号は、自受用(じじゅゆう)の智なり。故に仏の自説ともいひ、また随自意ともいふなり。自受用といふは、水が水をのみ、火が火を焼くがごとく、松は松、竹は竹、その体おのれなりに生死なきをいふなり。
然るに、衆生、我執の一念にまよひしよりこのかた、既に常没の凡夫たり。ここに弥陀の本願他力の名号に帰しぬれば、生死なき本分にかへるなり。これを「努力翻迷、還本家《努力(つと)めて迷を翻して、本家に還る》」といふなり。名号に帰するより外は、我とわが本分本家に帰ること有るべからず。
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